22/23 3人のお医者様の声(岩井先生)


社団育生会 久野病院理事 整形外科部長 医学博士 岩井宏次先生


ここでは3人のお医者様の、外断熱体験記をご紹介いたします。

 

これは権威ある建築専門誌「建築ジャーナル」の取材を受け、20094月号に掲載されたものです。

はじめに


母の家の引越しに伴い、平成15年に外断熱の住宅を京都に新築した。

私は医学的に考えて最も健康に良いと判断して工法を真の外断熱住宅(鉄筋コンクリート)にした。

 

その考え方と実際に5年間住んでみた感想を述べる。

健康に関して


私の長男は小学生のときから小児気管支喘息とアトピー性皮膚炎を患っており、中学になっても改善しなかった。

阪神大震災で動いた箪笥の後ろの壁を見て、カビが広がっていることにショックを受けた。

和室の畳をはがして顕微鏡で観察し、動いているダニが多数見えたときにもショックを受けた。

長男の血液検査でダニの抗体が異常高値であった。

 

夏の暑い日に私が2階の自分の部屋に帰ってきたときに、目が痛くなることがあり、環境には大変興味を持った。

室内のホルマリン濃度を測定してみたところ、環境基準を超えていた。

シックハウス症候群の典型例と考えた。

 

冬に風呂場やトイレで問題を起こして救急車で病院に運ばれてくる患者さんがかなりの数存在する。

例えば、脱衣室と浴室の急激な温度変化は、血管を著しく拡張または収縮させるため、血圧や脈拍を大きく変動させる。

これにより脳梗塞、脳出血や心筋梗塞を引き起こす。いわゆるヒートショックと言われるものである。

また、冬の夜間に寒いトイレに行くときに厚い上着を着込むと、運動に負担がかかり、転倒しやすくなり骨折する確率が増える。

 

家とは災害や天候の変化から肉体的に守ってくれ、そのことから精神的にも休息が得られるべきものである。

自動車や飛行機など近代的な機械が生じる騒音が氾濫している状態では、精神的にも良い環境と考えることはできない。

 

以上の状況を考えたとき、真の外断熱住宅しか問題は解決できないと確信した。

実際に住んだ感想


長男と次男が自宅で卓球を2時間以上楽しんでも、長男に喘息が生じることがなくなった。

生活空間に繋がるところではカビの発生は今のところない。

また、壁面はコンクリートであり、内断熱材など複雑な層状構造が存在しないので、シックハウス症候群を生じる可能性は極めて少ないと考える。

 

冬は床下と壁のコンクリート内温水暖房であり、エアコンは原則として使用しない。

温度計は21.5度を示すように暖房機を調整している。23℃に設定すると暑くて生活できない。

各部屋の温度差は1度以内である。朝夕の温度差は0.2度以内である。

 

換気は十分に行っているため空気の温度はやや低いが、壁からの輻射熱で程よく暖かく感じる。

一般的にこの感覚は体験しないと解らないと思う。

この心地よい暖かさは、何ものにも替えられないものである。

 

 

我が家では『木の温もり』ではなく『コンクリートの暖かさ』である。

トイレ使用時や浴室で着替えるときでも寒いと感じたことはない。

雪が降っている日にも、80歳の母は薄い長袖のシャツを腕まくりして生活している。

冬の寒い日に徒歩5分のスーパーまで出かけても寒いとは言わない。

赤外線表面温度計で母の足背の温度を調べているが、32から34℃と高めの値を示す。

 

外断熱住宅では寒く感じないため、四肢の血管が十分拡張しており、四肢抹消まで畜熱しているので、寒い外に出てもすぐには冷えないのだと考えられる。こんな環境ではヒートショックを発症するはずはない。

 

夏はエアコンで温度調整をしている。空気温と壁の温度はほぼ同じであるため、26度以下に冷やす必要はない。

27度に設定し、扇風機をゆるく使用しても心地よい。また足元が冷たくないのは良いことである。

湿度もコントロールしやすいので、心地よく感じるのだ思われる。

この感覚を設計士の安田氏は『ハワイの快適性』と言われている。

 

鉄筋コンクリートの室内は大変静かである。家の前を車が通っても気づかないことがある。

もちろん台風、火事、地震に対しても強い。この安心感は日常の仕事で疲れて帰ってきたときの大きな安らぎになり、精神的な健康は肉体的な健康にも繋がると考える。

 

 

母は以前の家で年1回以上風邪のため高熱を出していた。外断熱で暮らして5年で1度しか高熱を出していない。

これは事実であり、なんら修飾はない。母親は大変喜んでいる。外出の機会は以前に比して減っておらず、ウイルス被爆の機会は減少していないので、住宅環境に関係する可能性が十分ある。

問題点


冬の暖房暖房に関して床内と壁内の温度調整をするのに少しの忽がいる。

換気を正確にしなければ、思わぬところにカビが発生する。

いくつか問題点はあるが、建築技術で十分にカバーできる。これまでに根本的な問題点は出ていない。

強いて言えば壁面が厚いため室内空間が狭くなることと、初期投資が多くなることである。

後者に関しては、毎月の光熱費が安く、10から15年で回収できそうである。 

 

まとめ


 

肉体的、精神的に健康に良いこと、この上なく住み心地の良いことを考えると、鉄筋コンクリート外断熱住宅は大変価値のある住宅工法といえる。