外断熱は気密性が高いので結露を抑えられる?


外断熱と気密性の関係はありません。気密性と結露の相関関係もありません。

 

いろいろ混同されているようですので、ひとつづつ丁寧にご説明させて頂きたいと思います。

まず、「外断熱」とは何か?をご説明します。

外断熱の定義ですが、

「建物に湿気を透さない層を張り巡らせ、

の外側に断熱層を配置する」ことが根本です。

 

木造の場合、「湿気を透さない層」は防湿気密シートという材料です。

コンクリート造の場合は外壁(建物のいちばん外を囲うコンクリートの壁)そのものが「湿気を透さない層」の役目をします。

 

正式には、コンクリート建物の外壁の外側に断熱層を設けるものを「外断熱」といい、木造や鉄骨造は外断熱といいません。

 

1999年に外断熱という言葉がブレイクしたあと、それにあやかって営業をかけるため、木造や鉄骨造にも外断熱というキーワードを使われたのが誤解の始まりです。 あえていうなら木造や鉄骨造の場合は「外貼り断熱」といいます。

なぜなら、外断熱の第二の定義が「蓄熱体を有すること」だからです。

蓄熱体とは熱を貯蓄しておける物体です。

 

コンクリート造の家は外壁だけでなく、屋根や床、間仕切り壁など、ふんだんににコンクリートを使いますので、巨大な蓄熱体が存在し、巨大な熱容量を持っています。

 

巨大な熱容量があると、「熱しやすく冷めにくい」鉄の真逆の環境が誕生し、家の中の気候はすこぶる安定します。

たとえば、日中は汗がにじむほど暑いのに、夕方になるとめっきり冷え込むような日がありますよね。

そんな日でも家の中は一定の温度を保ちます。

 

前後2週間くらいの平均気温を保ち、春先など三寒四温で日々の気温がはげしく変化しても、家の中の気温はずっと同じです

 

ですから季節の変わり目に体調を崩しやすい人には持ってこい!です。

お疲れ様でした。

つづいて「気密性」の話をさせてもらって、良いでしょうか?

 

「気密性」の名付け親はおそらく物理学者だと思います。なんだか息苦しさすら感じますよね。

ネーミングセンスがなさすぎです。

では、気密性の意味は?というと、それは「建物に隙間がない」ことを意味します。

 隙間があると冬は足元から隙間風が侵入してきて、情けない寒さを感じますよね。冬はわかりやすいです。

では、夏はどうでしょうか? 隙間があったほうが涼しいのでしょうか? 

「家は夏を旨とすべし」これは、鎌倉時代に吉田兼好が残した言葉です。

 いまだにそれを信じている建築家がいるらしいですが、不勉強も甚だしいです。

 

夏は隙間から湿気が入り放題です。

 

日本の夏が暑いのは湿度が高いからです。

ハワイの夏がスッキリしているのは湿度が低めだからです。

ハワイへ行かれた方は体験されていると思いますが、ハワイでは汗で皮膚がべったりすることがありませんよね。

もちろん発汗はしているのですが、湿度が低く、そよ風が汗を吹き飛ばしてくれるからです。

 

ちょっと専門的になりますが、ハワイの湿度は15gKgdaを超えることはありません。

 これくらいの湿度なら、気温が30℃くらいあっても暑くなく、そよ風が吹けばとても爽やかです。

それに比べて日本の夏は、22 gKgdaくらいの日がざらにあり、うだるような蒸し暑さで、不快感全開!です。

  

そこでエアコンで冷房しますが、湿度をハワイ並みに下げるには25℃くらいに設定しなければなりません。

なぜなら一般のエアコンは、気温を下げるついでに除湿する構造になっているからです。

 

人間の体は25℃を望んでいません

その結果、冷房病になるのです。

要するに、日本の夏を快適に過ごすには除湿が肝です。

 

ところが、隙間だらけの家ではいくら除湿しても、その尻から湿った空気がどんどん入ってきます。

なのでエアコンは回りっぱなしで、電気の垂れ流し

となります。

 

そんな意味で、建物のスキマをなくすこと(気密性)はとても重要

ところが、モノの本には「気密性は計画換気のため」と書かれています。人間の意思で窓を開けたり、換気扇を回したりして思い通りに換気できるようにするには、気密性を高めることが必要、という意味です。

それはそれで合っていますが、湿度コントロールのためにも気密性はたいへん重要です。

最後に結露ですが、結露が発生するメカニズムについては、

「外断熱は屋外と室内の気温差が少なくなるので、結露が起きにくい?」でやさしく説明しましたので、是非ご覧ください。


外断熱 よくある質問 メニュー

 

▶ しっかり断熱すると、室温が外の気温に左右されにくくなる?

▶ 外断熱はぐるっと一続きで建物を包み込むので、気密性が高い?

▶ 外断熱は冷暖房費を節約するための工法?

▶ 外断熱は屋外と室内の気温差が少なくなるので、結露が起きにくい?

▶ 建物内部に結露が生じると、建材を腐らせたり、カビが繁殖する?

▶ 外断熱は逆転結露(夏型結露)が起きやすい?

▶ 外断熱は気密性が高いので結露を抑えられる?

▶ 外断熱は建物の構造体の劣化を抑制する?

▶ 外断熱は壁が厚くなるので、部屋がせまくなる?

▶ 外断熱は耐震性に不安がある?

▶ 外断熱は高気密・高断熱であるがゆえ、換気が欠かせない?

▶ 外断熱は建築費が高くつく?

▶ 内断熱は日本で一般的な工法であるため、技術面で安心できる?

▶ 内断熱は建築コストが抑えられる?

▶ 内断熱は気密性が低いので、結露が起きやすい?

▶ 木造に比べてコンクリート造のほうが、屋外と室内で温度差が出やすいので、結露が発生しやすい?

▶ 外断熱は建築費が高いが、冷暖房費が安い?

▶ 外断熱は建物が劣化を抑えるので、長持ちする?

▶ コンクリートそのものが蓄熱体となる?

▶ 木造でも外断熱と内断熱が選べる?

▶ そもそも外断熱工法とは?