防音対策を施した賃貸マンションの人気が高まっています。
従来は音楽家や音大生が主に利用してましたが、ユーチューバーや在宅ワーカーなど利用者が多用化しています。
家賃は一般の賃貸マンションに比べて3割ほど高いのに、東京では入居待ちの人が急増し、行列のできる賃貸マンションとなっています。
出典:2023年10月4日(水)読売新聞
すべての入居者は騒音に悩まされている
家賃3割増し! と聞いて、大勢の家主が防音マンションの新築を手掛けると、近い将来、供給過剰になるのでしょうか?
答えはNOです。なぜなら上記の需要は氷山の一角にすぎないからです。
防音マンションは、ユーチューバーや在宅ワーカーが必要とするだけではなく、すべての人に必要なのです。
実はマンション住まいのほとんど、といっても過言でないくらい多くの方々が、お隣の騒音や上階の振動に悩まされているのです。
その一例を挙げてみましょう。
【すてき空間/マンション情報まとめWIKI】より
≪Aさん≫
二重床・二重天井ですが、上階の子供の走る音が、パタパタ・ドンドンうるさいです。
昼間、テレビをつけていても、ひびく程です。
ファミリータイプの物件なので、多少は覚悟してましたがこんなにうるさいとは思いませんでした。
二重床を過信してました。ちなみに同じマンションで知り合いになった人に聞いてみたら、全く気にならないと言ってます。
その人に、うちに来てもらった時、パタパタ・ドンドンうるさいのでビックリしてました。
分譲会社、施工業者、工法等などではなく、上階に住む人の運次第では、ないでしょうか?
≪Bさん≫
どんなにグレードの高いマンションでも、うちのマンションは高規格なんだからと、走り回られたり、とび跳ねられたりしたら、たまったものではないですよ。
まぁ、結論をいえば “近隣住民の質” に運があるかないかで快適なマンションライフが送れるかどうかが決まるのでしょうね・・・
≪Cさん≫
マンションに住むということは、 他人の生活音が聞こえるということを前提で購入すべき。
生活音以上の音も目をつぶるぐらいの覚悟ないとね。
そういう覚悟がないのにマンション購入した人は、生涯の大失敗じゃないですか? 耐えられないのなら、最上階ですかね・・・
ほんとうにお気の毒
運であるとか、諦めるしかないとか、本当にお気の毒です。
他のこと、たとえば駅から遠いとか、部屋がせまいとかは自分の工夫次第でなんとかなりますし、だんだん慣れてくるものです。逆に、寝付いたころにお隣さんが帰宅して玄関ドアをドカンとしめるとか、上階の人が夜中にトイレにドカドカと歩いていく振動で目覚めるストレスは、積りに積もってくるばかりです。
職場でのストレスを癒すのが住宅であるはずなのに、逆にストレスが溜まる。これではしまいに病気になってしまいますよね。
誰も解決しようとしない、建築業界
マンションは賃貸、分譲に関わらず上下左右に他人が住んでいます。
上の階で子供が走り回ると天井からものすごい音(振動)が響いてきます。
今、子供がどの位置にいるかわかるほど顕著です。
机の上から「仮面ライダー。トーッ!」とか言って飛び降りた際には、心臓が飛び出るほどの衝撃です。また、お隣の飲み会で盛り上がったら「ドッカーン!」と大声の合唱が響いてきます。まるでこの部屋にいるかのように、しかも深夜に。
これは立派な社会問題です。そして今に始まったことではありません。
しかしだれも防音・防振には手を付けませんでした。その理由は主に2つです。
① 豪華なシステムキッチンやスタイリッシュな洗面・バスにお金をかけたほうが「映える」
② 防音に取り組んでも、いちゃもんをつけてくるクレーマーがいる
なので、タワマンや億ションであっても、同じ悩みを抱えることになります。
先日、CCIMやCPM(米国公認不動産経営管理士)などを取得し、賃貸業界で講師を務める方に聞いたのですが、
騒音・振動のトラブルは木造アパートよりコンクリート造のマンションのほうが多いそうです。
なぜなら、「コンクリート造のマンションなら上階やお隣の騒音はある程度防げるし、それほど気を使わなくても自由に生活できる」と認識しているからだそうです。そう思われるのももっともですね。
でも実は、鉄骨やコンクリートは音や振動をとても伝えやすい性質があります。
たとえば1階の住民がコンクリートの壁に絵画を吊るためにドリルで穴を開けると、10階の部屋まで響きます。
10階の入居者はお隣か9階の人を疑いますが、真犯人は1階の住民だったという話もあるくらいです。
要するに、1階から10階まで構造体は一つながりだから振動が伝わるのです。
少し専門的になりますが、鉄骨やコンクリートに振動を与えると、いくら距離をおいてもその振動はほとんど減衰しないという実験結果があります。壁を分厚くしても、柱を太くしても構造体が振動しはじめると、どこまでも伝わるのです。
では、どうすれば、防音・防振できるのでしょうか?
答えはズバリ、縁を切ることです。そうです、悪縁を切のです。
ちなみに京都市の祇園のちかくに「安井金比羅宮」と言って、悪縁を切ってくれる神社がありますが、残念ながらこの問題は解決しません。
私共は1999年から実践してきました
弊社(Mac建築デザイン研究所)は命名の通りデザインを主に出発しましたが、建築には目に見えるデザインと、目に見えない性能の両立が必要と痛感し、1999年からは目に見えない性能を追求してきました。その1つが防音・防振です。
幸い弊社は、個人の音楽練習室だけでなく、ピアノ教室の先生や、高等学校のブラスバンド練習室、ロックバンドのリーダーなどから相談を受けることが多く、いろいろな楽器の特性を学ぶことができました。
そして木造、鉄骨造、コンクリート造といろいろな構造の建物での防音実験をすることができました。
トライ&エラーの精神をもったクライアントさんに恵まれ、私はのびのびと知恵を働かせ、次第に良い方法を掴ませていただきました。
Musik北参道は集大成
15年間防音に取り組み続けて培った防音ノウハウ、それに飽き足りず2018年からは「楽器の音色が美しく響くスタジオ」を目指して、京都市にKayacc Klavier(スタンウェイで演奏できるなミニホール)を完成させました。
京都出身のシンガーソングライター「和紗kazusa」さんのお気に入りのミニホールです。
そして2023年春に完成させたのが、代々木の≪Musik北参道≫:住まえる36戸のスタジオです。
防音は3種類ある
ひとくちに防音と言っても、3種類あります。
① 防音(音を防ぐ) :大きな声や、楽器の音をシャットアウトする
② 防振(振動を防ぐ):上階で幼児が走り回っても大丈夫
③ 音響(美しく響く):ミュージシャン用スタジオ
また、それぞれに性能レベルがあり、目的と予算に応じて適切な構造や仕組みをチョイスします。
≪Musik北参道≫は、上記のすべてを網羅したフルスペックの賃貸マンションです。
入居者に常識をもって生活してもらうのが大前提ですが、そこそこ自由に生活してもらっても上下階やお隣さんに迷惑が掛からないマンションを創ること、それが建築家の使命だと思っております。
また、防音や防振、音響を測定して性能を数値化できるので、客観的なエビデンスとして生活の基準を作ることができます。
Musik北参道はフルスペックですが、あえて管理会社は生活規定を作っております。
入居者の節度ある生活をリードすることによって、より快適な生活ができるからです。
まっ、設計者の本音としては、「夜10時から朝8時までは静かに生活してくださいね。あとは好きにやってもらって大丈夫!」
と自負しておるのですが・・・
最後までお付き合い、ありがとうございました。
防音・防振・音響にご興味を持たれた建て主さんは、どうぞご相談フォームからお越しくださいね。
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